映画コラム「ドライヴ」

Drive

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映画コラム
「ドライヴ」(封切作品)

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※あらすじ 主人公は表向きはさえない車工場で働きつつ、実は裏では犯罪者を車で逃がすドライブのプロ。孤独な生活の中で、ふとしたことから人妻に恋することになり、それが彼の運命を大きく変えることになる。

▼ これは文系男子の夢映画。

映画がはじまる。冒頭シーンは大事。映画ジャンルに関係なく観客に対する「つかみ」だと思う。極論すれば「つかみ」が良ければ、すべてよし、まではいかなくても、かなりいい。本作のつかみは素晴らしいのが2点。ひとつは画像が美しいこと、もうひとつは主人公の「仕事」や性格についてキチン表現していること。

前者は、夜の街を「逃がしのプロ」である主人公がドライヴする。夜のシーンが美しく、かつスリルがある。壮絶なカーチェイスを予想していたら、それは軽く裏切られる。主人公の冷静な目は、やみくもにアクセルは踏まない。時にはそっと、ヘッドライトを消して大きなトラックの物陰に駐車しパトカーをやり過ごす。警察のヘリが来れば、上からの死角の多いところに逃げ込み姿をくらます。

仕事を終えると暗いアパートに戻る…生活はあくまで地味な感じ。カッコいい!カッコいいよ主人公。犯罪者だけど、美学があり、暴力的ではなくて、ストイックな生活。そして孤独。これら描写は僕のような文系男子映画ファンの心をしっかりつかむ。惚れるよなぁ、こういう主人公。みんな好きでしょう。

そこから、近所の人妻に惹かれるシーンも、実にテンポよく進んでいく。このあたりも自然。本作の監督は映画の定石を凄く理解していて、その模範解答をベースに映像作っているように思える。そのため展開が実にわかりやすい。スッと頭に入る。キャラクター設定もそうだ。裏の顔を持つクールで孤独な主人公。ヒロインは、親しみやすい可愛らしい感じ。そして、主人公に敵対する悪人はあくまで徹底的な悪人。実のわかりやすい構図。

本作の難点をあえていうなら、手堅い感じで構成される結果、それなりの予算で作った作品だとは思うのだけど、全体的に趣味のいい「小作品」で終わった印象がある。サウンドトラックも意図的だとは思うのだけど、80年代的なシンセのような音を使っていて、その年代に量産されていたようなアクション作品を連想させる。

映画館というよりテレビで休日の昼下がりの半端な時間、または深夜にひっそりと解説もなく流れていた映画の雰囲気。それは愛すべき味わいはあるが、ダイナミックなスケール感には欠ける。そこを人によってはつまらなく感じかもしれないし、ラストも予想の範囲流れである。あと、バイオレンスの激しさも苦手の人もいるかも。本作はアート系の香りのする犯罪者ドラマという感じかなぁ。

後半がものすごくバイオレンス風味で逆にリアリティに欠けるのも本作の良さだと思う。だって、あんまりバイオレスが現実的だと、逆に感情移入しづらい。本作が文系男子にひとつの夢を表現したファンタジー作品だと考えることもできるから。だから、本作の悪人は徹底的に悪人。主人公に対する完璧な悪人ではないといけないだ。

孤独でクールな主人公が、美人というより可愛らしい女性に恋をして、その結果バイオレンスに溺れていく。「ドライヴ」は僕のような文系男子の妄想にピッタリなのである。それをふまえつつ、美しい画像と、主人公の美学を味わって欲しい。

 

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映画コラム「ドラゴン・タトゥーの女」

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「ドラゴン・タトゥーの女」 (封切作品)

/ THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO

●フィンチャー節あり。

えーと、僕がデヴィッド・フィンチャーで観た作品いえば「セブン」(テレビで…)。あと、「ファイトクラブ」(レンタルで…)ぐらいか。「ファイトクラブ」はかなり好きだよ。ブラピも良かったし、エドワード・ノートン好きだし。

そうそう、「エイリアン3」も、この監督なんだよね。最初は知らなくて。僕は「エイリアン」シリーズは好きなんですが、フィンチャーの「エイリアン3」は一番しっくりこなかった。VHSを持っていたのですが一回観て放っとおいた。なぜかといえば、その時、僕はキャメロンみたいなノリを期待していたかもしれない。

のちのちフィンチャー作品として意識しながら、観るとそれほど悪くない。ただ、シリーズで一番大予算を組んだ作品と知れば、やはり他の2作よりは劣っていると思う。ここだ!いうシーンが思い出せない。まぁ、3作目でどれだけオリジナリティを出すか、というのはキツイテーマだと思う。その点おおきなハンデがあったといえる。

前置き長すぎでしたね。本作はおもしろかったですよ。長いけど退屈しなかったし。印象としてはいい感じでハリウッド映画だなーということ。観る前は158分という上映時間から文芸作品みたいかなーと思った。でも、実はしっかりエンターティメント。タルコフスキーみたいな長回しでじっくりなんてシーンはありません。しかし、グロなシーンはあるので注意。

サスペンスのストーリーを実にサクサクした編集で進行していきます。サクサクすぎて、油断すると振り落とされるジェットコースタームービー。ラスト近く僕少しは放り投げられました僕はなんとか空中で一回転してなんとかコースターに戻った。でも記憶が少し抜けました。

テンポがいいのは下手すると、それだけでドラマが無味乾燥になる可能性がある。そのギリギリのところで、人物の感情の動き伝えているのがフィンチャー節だなぁ、と思いました。

普通の監督なら、大金持一族が出る映画というと、品のいい顔の裏にあるドロドロした部分を抽象的だったり、比喩としてのシーンを出しそうですが、フィンチャーはひたすらMTV的にサクサク進行させます。そのスピード感が監督の意図したものだとすると、オープニングのド派手なタイトルも理解できる。スウェーデンの平和な光景が退屈に感じてくると、ちゃんとセンセーショナルな場面も同時平行で観せるのが、良い意味でハッタリが効いてる。その辺のサービスが効きすぎてて、サスペンスとしてのラストはやや拍子抜け。それでも、おもしろかったからいいか、と楽しく許せる作品ではありました。
























スエーデンのお金持なシーンの静的ば

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映画コラム「バルジ大作戦」戦争娯楽作!、という構造。

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FilmReview「バルジ大作戦」(1965)
Story:第二次世界大戦末期。敗北の濃いドイツの大反攻作戦を描いた作品。

● 戦争=娯楽作品になるのか?

正直、「戦争娯楽作品」と書いてみて抵抗を感じた。戦争が、娯楽なのか?と一歩、気分が引いてしまう。でも、それを考えると、人が死んだり、傷ついたり、ケンカしたり、いやいや失恋したテーマでも、それを「娯楽作品」として説明していいのか。そんなことを急に気になる、気にしすぎる時代なのかなと思う。こんな傾向、いつまで続いていくのだろうか。

で、結局、本作は「娯楽作品」として紹介したい。

作品の性質としてもそうなのだ。本作は史実をベースにしているものの、作戦の流れよりも、そこで繰り広げられるドラマのエピソードが中心。複数のエピソードがそれぞれ魅力的だ。そこにスペイン軍協力によるという迫力あるリアルな戦車シーンが加わる。つまり、本作の背後にある史実というのは、どちらかといえば「借り物の設定」であり、話のメインは、「人」であり「戦車」である。

まず、人。いくつかのエピソードがあり、ありがちなんだけど、そのお約束具合が楽しませてくれる。例えば、執拗に敵軍の動きを予想し警告する米軍参謀。恋人の敵討ちに燃える米軍戦車兵。この反攻作戦にすべてをかける戦争に取り憑かれた独軍戦車隊将校、青二才から立派な指揮官となる米軍将校…などなど。個人的には、最後に紹介した米軍将校のエピソードが好き。ベテラン兵士からバカにされ、すぐ「降参しよう」というキャラクターが、困難を突破していくうちに立派な指揮官になるところが心に残る。そして、ラストの重要なところで活躍するしね。

そして、戦車。残念ながら、当時の戦車に似せよう、というのはまったく無視なので、戦車ファンには残念だと思う。しかし、まったくCGなしで現実の戦車が多数動き回るところは、まったく力強くリアル。今のCG技術でもなかなか再現できないのではないだろうか。ラストはスカッと連合軍の勝ち!というにも、それはそれでいいと思う。

考えさせる映画もあってもいいし、考えさせない映画もあっていい。また、考えさせるシーンもあってもいい。本作は反戦映画ではない。だけど「戦争って嫌だな」と思わせるシーンはある。でも、それは作り手のメッセージとかではなくて、状況の中で、当然戦争を嫌だと考える人間もいるだろう、というバランス感覚だと思う。

史実にこだわらない結果、誰もが楽しめる映画になっているのはポイント。
映画の表現は幅広いほうがいい。
こんな戦争映画の新作も観たい気がする。


 

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映画コラム「スピード2」。そのガッカリを考察。

Sp2

Film Revew /「Speed2」
Story:警官とその彼女が豪華客船でバカンスを楽しむことになる。しかし、船はジャックされ客とともにタンカーに激突させる計画が進められる…

● 大作&駄作についての個人的考察

つまらない映画を観る、それもなかなか興味深い。これは嫌味じゃなくてマジな話。まぁ、低予算のアート狙いでつまらない映画、というのは結構あるとは思うだけど、大予算のアクション映画でつまらない、というのはなかなか考察のしがいがある!というもの。
以下、当然ネタバレございます。

キアヌ・リーブス主演でヒットした作品のパート2。でも、キアヌは降りている。当然出演オファ−はあった思うけど、予想としては、キアヌはシンプルなアクションものには興味はなさそうだし、ストーリーも限りなく二番煎じだから断ったのかな。僕は前作の「スピード」の魅力って、シンプルでこじんまりしたところ。そして、キアヌとブロックの典型的でないキャラ設定が良かった。キアヌのあんまり強そうでないとこ、サンドラの色気のなさ、そこが良かった。悪役のデニス・ホッパー先生はいつも感じだが、元警官の恨み節というのが普通にハマっている。

さて、「スピード2」である。まず、キアヌのかわりのヒーローがつらい。普通にマッチョな熱血警官で面白みがない。サンドラとの組み合わせも悪そう。なんか無理してつきあっている感がある。前作と違って、最初から2人は恋人という設定で関係性の発展を描けなくてマイナス。船でのバカンスも、ちよっとした仲直りも兼ねて、という感じなんで前半はダラダラと2人のゆるい恋愛模様を見せられるのはホント退屈。早くなんか爆発しろと思いたくなる。

さて、今回の悪人はどうだろうか?前作がホッパーだったら、今度はデフォーで!というのは簡単すぎるんじゃないか。キャスティング・ディレクターは仕事してるのかしら。僕は、デフォーという役者自体は嫌いじゃないのですよ。でも、今回の元コンピュターエンジニアという設定はなんか雰囲気が合わない。最後まで熱演はしているだけど、どうも空回りなのが悲しい。

他のキャストはどうだろうか? 最初のほうに主人公、ブロックと一緒の乗客が交流するシーンがいくつかあり、これはポセイドン・アドベンチャーなみに、パニックが起きてから、みんなで力をあわせて危機を脱出!というシーンがあるかと思えば普通に無かったです。ひたすら、ただの被害者でした。うーん。サンドラはみんなのためにいろいろ活躍するのですが、画面がどうもゴチャゴチャして印象に残りません。主人公も、アクションヒーローとしての職務を淡々とこなす。デフォー相手に。銃撃戦もなく、格闘もなく基本、追いかけっこのみ。みどころが…

ラスト、無事、燃料満載のタンカーへの追突が回避したが、リゾートな砂浜に船が突っ込んでいく。陸に乗り上げても別荘みたいなところに船は進んでいく。ここが一種のハイライトシーンとして、長いシーン。これが予算がかかっている割にはどうもおもしろくない。おもしろくしよう、といろいろ工夫はしているのだ基本のアイディアがおもしろくないのだ。別にそんなの、みたい人あんまりいない気がする。ちよっとなんかあって止まる、でいいじゃない。長過ぎる。

ここで僕がぼんやりと考えたのは先に脱出したデフォーの悪あがき。予想とおり、船が止まった後、そしてデフォーは?という感じになるのだが、サンドラ人質の割には緊迫感ゼロ。彼女にあっという間に出し抜かれ、飛行機で脱出。でも、それも失敗して、なんだかなー最後を迎える。

思うのは基本アイディアが、前作を受けついでいるので「激突」のスリリングにテーマを置いている。だから、ガンアクションも格闘も無い訳ね。客の活躍も。でもさぁ、それを律儀に守ってもただ今回はつまらないような。ここは的を集団テロリストにして、ダイハードみたいな感じもでいいかと思ったけど。

バスの暴走にはたしかに「スピード」感がある。でも、どうも豪華客船の暴走にはピンとこない。なんで今回は「船」なんだろうね?飛行機とか、鉄道、また船ならずっと小型の船舶がいいと思う。豪華客船というスケールの大きさがスリル感と反比例している。なんか、前作のおもしろさのエッセンスを無理解なまま、とにかくお金をかければ!というノリが出た作品だな、と思う訳です。

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映画レビュー「聯合艦隊司令長官 山本五十六」

Yi

映画レビュー/
「聯合艦隊司令長官
山本五十六」(封切作品)

Story:太平洋戦争での日本海軍の山本五十六。あくまで開戦には反対だった聯合艦隊司令長官山本の生涯を描く。

● 山本五十六に当たりすぎる光。そこには影も。

毎年、仕事納めが終わると僕は街をあてもなくフラフラする。ソンビのように。12月31日のお昼ごろ今年は札幌ファクトリーに行きました。するとテナントはほとんど閉店。「ファクトリーは休業しております!」と実況放送をしたいくらいです。きっと1日から営業するのでつかの間のお休みなのかな。

個人的にはデパートとかは年末年始思いっきり休んでもらっていいと思う。働いている方々のことを考えれば。デパートが1/3まで閉店しても基本困らないのですけどねぇ。デパート好きの僕がいうのから間違いないです。昔はそんな感じだったでしょう。4日に福袋でいいんじゃない。買ったことないけど。

さて、ファクトリーはユナイテッドシネマをやっておりました。映画館についてはすいませんが年中無休でおねがいしたいです。いつでもいける場所であったほしい。いつまでも。さて、観る作品はミッションイッポシブルか迷うところですが、ここは大晦日は日本映画ということで本作となりました。お客さんは年配の方も結構いました。それはそうでしょう。

レビューの前に僕の立ち位置を説明しておくと、僕は現代史が好きで太平洋戦争の主要な海戦やそれを指揮した司令官や参謀の知識はあります。そのあたり知っていたほうがより楽しめる作品です。なくても大丈夫ですけどね。

説明として映画内で人物の説明のテロップを出すとか、ナレーションを加えるのがもっとあってもいいと思いました。ここは意見としてこだわりたい。なぜかといえば、一般的な戦争映画は、そんな司令部のお偉いさんの人物知識がなくても、名もない一兵隊のドラマを展開させて、誰が観ても感情移入できる軸も作ります。しかし、本作ではいわゆる、無理に戦場にかり出される「いち兵隊のストーリー」がほとんどありません。

基本は大日本帝国海軍という組織の一員であった山本の人物像が中心なんで、まわりをとりまく人物の説明が欲しかった。劇場で上映前に海軍の基本人物関係図を配ったほうがいいくらい。冗談ですが、そんなチラシがあったほうが本作をずっと楽しめると思うなぁ。パンフレットはいろいろ書いてあるのかしら。

山本と機動部隊司令 南雲の確執を中心に描いてましたが、宇垣参謀、源田参謀、黒島参謀のあたりももっと描いてくれると山本の立ち位置や、ミッドウェー作戦もひろがりがでたと思うのです。時間的に無理な話かなぁ、やっぱり。それにしても、阿部寛の山口多聞司令はルックスは全然違うけど雰囲気が出てた。山本の数少ない理解者として南雲と同じくらい描写されてたな。カッコ良かった。

本作では、いち兵隊のドラマも、山本をとりまく将官も描くのはアッサリすませて、山本の人物描写に完全に力点を置いてる。表現される山本は、戦争には反対、甘いもの好き、気取らない、誰にも優しい、視野も広いという人物像。つまり誰にでも愛される人物。

そんな明るい描写の中で、僕が暗に感じるは、軍人のトップとしては本当にこれで良かったのだろうか?、と思うところがある。例えば、最終的に現場にまかせてしまうところ、失敗者に対して、まったくその責めを問わないところ、これでいいのだろうか。

思うのは山本五十六は開戦が決まった時点から、大きな気持ちの転換があったのではないか。そこが大事な作戦中も将棋を指すというところが表しているのか。職務は全力で尽くす。でも、断固反対していた開戦が不回避になった時、開戦時にはどこか達観した気持だったのでではないか。

戦闘シーンは予想よりいい出来なんですが、あくまでドラマのを補佐する一要素という感じ。それだけで名シーンが成立してる訳でもない。ただ聯合艦隊が海を進むところや砲撃良かったなぁ。

逆に本作で山本五十六に興味を持った方は、関連書籍を読んでもらうといろいろ映画の中のシーンがわかってきていいかもしれない。

Text Shinichi Ishikawa / NUMERO DEUX


















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映画レビュー「トゥルー・グリット」

Tg

映画レビュー/「トゥルー・グリット」(2011)
Story:ガンマンの時代。父をおたずね者に殺された14歳の娘。彼女は保安官を雇い父の仇をうつ旅でる。それに同じおたずね者を追跡するテキサスレンジャーも加わる。


● 持ち味は隠し味になった。

Story:ガンマンの時代。父をおたずね者に殺された14歳の娘。彼女は保安官を雇い父の仇をうつ旅 でる。それに同じおたずね者を追跡するテキサスレンジャーも加わる

 さて、今年のクリスマス・イブは映画を観ました。普通そうでしょう(!)。札幌駅北口の付近にある名画座、蠍座にて。駅から10分圏内ですが、ひっそりとした立地がいいですね。それにしてもひさびさでした。映画館内の素敵さは変わらず。木目を生かした落ち着いたインテリア。シネプレ系のモダンで楽しげなものとは違った大人な雰囲気。とりあえず、午後の紅茶(レモン)を買いました。本当は緑の無糖があれば良かったのですが。

 コーエン兄弟の新作。僕はこの監督といえば「バードンフィンク」「XYZマーダーズ」といってカルトな作品の印象が強い。もちろん、近作もいくつか観てる。でも、その2作の印象が強いのです。でも、それもそろそろ頭から振り下ろさないといけないね。今ではハリウッドの安定感あるベテラン監督という風格です。本作は西部劇。ジョン・ウェインがアカデミー賞をとった主演作品のリバイバルでかなり正当派です。

 男2人と少女を加えた追跡劇。少女の勝ち気で生真面目な感じがいい。それが本作の魅力の間口をひろめている。この役が成人女性だと違うんだろうな。この少女の前では2人のガンマンはとても素直だ。本音で話す。それが自然に感じられる。なんか男女の余計なモヤモヤがなくていい。自然の中を進んでいく道中は絵としても気持ちがいい。アクションは要所要所にビシッといれる感じなので多くはない。ドラマでみせる作品だ。そこに退屈はない。

 話的にそんなドンデン返しがある訳でもなく、お約束的な展開だともいえるのだけど、コーエン兄弟特有のポップな妙味は、隠し味としてはたしかにある。そこが本作を最後まで魅せる作品にしている。昔の作品は妙味が前に出ていたが、現在は隠し味になった。それがいい。僕はラストのクレジットまでテキサスレンジャー役がマッド・ディモンだとは気がつかなかった。いい役でした。今までのイメージとも違うし。

Text Shinichi Ishikawa / NUMERO DEUX

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映画コラム「RAILWAYS」

Railways

Film Review「RAILWAYS」(2010)

あらすじ:主人公は東京で妻と娘を持つ一流電器会社の49歳エリートサラリーマン。ある時、部下へのリストラ命令と同期の事故死、母の病気に直面して、会社を退職。地元で夢だった電車運転手になることを決意する。

● ファンタジーだから成立する作品。
  これは批判ではなくて、そうするべきなのだ。

運転手は子供の憧れ職業のひとつだと思う。子供からお年寄りまで乗せてあげて給料をもらう、という仕事内容のわかりやすさ、「乗り物の運転」という子供の興味のあるコト。それらの想いは年を重ね、社会というのを知るについて失われる場合も多い訳です。まぁ、そんな複雑な事情はヨコに置いておいて作品にしてみたのが本作であります。

上のあらすじとおりで展開も予想の範囲。ライトな娯楽作品で、家族でデートで若者からお年寄りまで楽しめます。キャストも主演の中井貴一、高島礼子、脇役も橋爪功、佐野史郎、宮崎美子という抜群の安定感のベテラン勢。ヒロインの本仮屋 ユイカもフレッシュで全方位な魅力も安心。王道の庶民派な素敵なお嬢様。彼女は別に鉄子じゃないけど「つかえるもは大事に使う」という視点で鉄道に理解アリというのが観客の共感を得ます。

主人公は一流会社員ですから、きっと早期退職で退職金タップリ、妻はお店オーナー、娘は父の退職に大変理解ありで、就活を放り出しての主人公母の看護。もう家族のスキなしです。その一体感は最後まで変わりません。主人公がクビになりそうになれば、お客さんらが社長に直談判。

理想論のファンタジー映画といえばそれまでですが、地方鉄道の待遇の問題というのも少しですが描かれてもいます。でも、基本的にはただ楽しむ映画だと思います。あえていえば自分なりの幸せの価値観を考えたくなる作品でありました。

本作は、同様のテーマで続編も作られるとのこと。多分、次作では、うまくいきすぎの本作に比べて、いろいろな軋轢が描かれるかと思います。ただ、リアル軋轢がありすぎると本作の「子供のころの夢を、年を取ってからの挑戦」というカルシタスが失われる訳で「こんなにうまくいく訳ないじゃん」とツッコミつつ、本作の抜群の安心感はキモだとは思う。そのあたりの釣り合いを、次作でどうとるか興味はあるので観たいですね。

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映画コラム「マルドゥック・スクランブル 燃焼」

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「マルドゥック・スクランブル 燃焼」
FilmReview

スガイにて鑑賞。冲方丁によるSF小説のアニメーション化作品である。OVAなんだけどリリースごとに全国の上映も行っている。3部作の今回は2作目。僕にはまったく馴染みのない作家なんだけど1作がおもしろかったので、今回の2作目も観ることにした。今回までに小説読んでおこうかな…と思いながら結局未読。でも、そのほうがアニメをより楽しめるでしょう、と自分に言い訳をする。

映画が始まる。前作ラストは絶対絶命状態のような感じだっのでワクワクする。そのあたりの展開は結構アッサリだが、十分に惹きつけるオープニングだった。ガッカリ感はない。イントロで緊迫感をみせてくれた。

昨年観た1作目は導入部。なので、世界観の説明、主人公の誕生、ラストあたりで主人公の目的がハッキリしてきて本格スタートというところだった。本作からラスト3作目のイントロという感じである。そのためか、今回は1作目より静的なシーンが多い。そこは意識的なことだと思う。アクションシーンは大好きだけど、あればいいというモノでもない。アクションにはカルシタスはあるけど物語の深さを出すのが難しい。来るべきラストシーン(当然、アクションを内包した)のための本本作を静的シーン中心の構成にしたのはいい決断だと思うし、成功していると思う。

本作前半は、主人公再生のもととなった「楽園」の描写があり、そこで少年的キャラやイルカとのやりとりは、外の街のなんともウサン臭い雰囲気とは美しく対象的で1作目との違いが出ているし、作品の世界観をあれこれ考えるにも意味深だともいえる。後半はは再び「カジノ」という胡散臭いイメージの象徴のようなところに場面は変わり、そこは大きな意味で主人公の「勝負」な場所となる。

そこで主人公は学ぶ、そして成長していく。そういう意味で「楽園」と「カジノ」というコントラストの中、ドラマ中心の構成は効果的となっている。女性ディーラーとのやりとりなんで、さりげない内容だけど、なかなか暗示的に魅せてくれるとは思う。

それにしても、この作者にはウィリアム・ギブスンあたりのオリジナルのサイバーパンクに対する「愛着」を観るごとに感じる。ギブスン好きの人にはぜひ観ていただきたい。これはオマージュとかではなくてもっと基本的な作者に身についた「愛着」だと思うのだ。

最後にちよっと、難点と感じたところを。僕は原作を読んでないで、今後の展開はわからない。本作は人間性のない娼婦として生きてきた主人公の少女。驚異的な力を持っていながら「有用性を証明しないと存在できない」という生物兵器。このふたつが、手をとりあって、自己のアインディンティを確立する物語、で終わるならら、ちょっと優等生的すぎる話かなぁと思った次第です。

それにしても、静から動へ展開しそうな次作も期待。
DVDもあるけど、劇場で楽しみたい。そのためにも小説も読まないでおこう。


本作の予告は以下から。
http://www.youtube.com/watch?v=-MXilz4VRGk&NR=1


 


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映画話「007 消されたライセンス」

Licencetokill

Film Review
「007 消されたライセンス」(1989年)


● 2作で降りた4代目ボンド。
      ティモシーダルトン


2作で終わった4代目ジェームス・ボンドであるティモシー・ダルトンの2作目。この後のボンドが、ピアーズ・ブロスナン。たった2作のダルトン作品であるけど、「リビング・デイライツ」と本作は僕は個人的に好きな2作である。

ダルトンのボンドは、英国紳士のようなスタイリッシュさやスマートさには、やや欠けるますが、ダルトンのほうが今ふうのリアルな人物として親近感があります。紳士ほど大げさではなく普通に育ちの良い感じ。

それに、6代目ボンドのダニエル・クレイグの野性感に比べれば、ダルトンのほうがずっと落ち着いているし紳士な感じがする。僕はグレイグのボンドは嫌いではないけど、野性味を出す時(=アクション)とそうじゃない時(パーティのシーンとか)の案配が、ダルトンのほうが好き。

ダルトンのボンドの最大の魅力は演技だと思う。表情の演技がとても豊かで、しゃべなくてもボンドの気持が伝わってくる。それがオーバーアクションで嫌いな人もいるかもしれないけど。007は娯楽作品なんだから僕はわかりやすい演技を支持したい。運動神経の良さも含めてダルトンの演技のうまさは魅力的。

●おすすめの鑑賞法。

最初に書いたようにダルトン・ボンドの唯一の2作は、1作目を観てから本作を観たほうがいいと思う。なぜなら1作目はダルトン・ボンドの最初の作品ということで、とても007らしい、スタンダートな作りになっている。しかし、本作は前作に比べて、やや変則的な感じの作品に仕上げているので、本作から観るとちよっとダルトン・ボンドが捉えにくいと思う。僕的なお勧めとしては1作目「リビング・ディライツ」でダルトン・ボンドを気に入ったら、本作を観てみたらどうだろうか。まぁ、どちらでもいいですけどね。

●変則的なストーリーは隠し味のアレンジ

そんな訳で、本作はやや変則的なストーリーになってます。具体的には、そ普通、007作品は上司「M」から指令を受けて女王陛下のための働く諜報部員。しかし本作では、親友の仇うちに個人的な理由で敵のボスに向っていきます。最初から殺す目的なんでしょうね、多分。ただ大変則作品かというと、そうでもなくて、そこは007シリーズなので、エンターティメントという枠から当然外れないし、上司の「M」や秘密兵器担当の「Q」も登場。ヒロインとのロマンスもあります。組織人としてではなく、個人の意思で動いていくところが目新しいアレンジになっています。ただ、あくまでもアレンジなんで原曲が変るものではありません。

● 魅力はアクションとしての質の高さ

本作は、5代名ボンドのロジャームーアの後期作品が、ちよっとコミカルというか、おもちゃっぽい作風になったのを反省してかシックなアクション作品を狙っているのかと思います。ダルトン1作目から、そのラインで修正されていて、本作では、そこをもっと押し進めて、身体ひとつで巨大な組織に立ち向かうボンドを描いています。

その中で、CIA局員の女性協力者がヒロインになっていて、きれいで強くて、繊細なキャラクターがいい味出してます。悪役のロバート・デヴィは生理的に気持ちの悪い感じのキャラクターで、これもいい悪味をだしてます。そして、その腹心の部下が、新人の頃のベニチオ・デル・トロで、出番は少しですがその気持ちの悪さはとっても印象的です。こう書いていくと脇役も、パッと見の派手さはないが、充実してますね。そうそう、本作はみたことのないような派手なビジュアルが少ないののですが、スタントを駆使したアクションが見所が多く、今みてもなかなか迫力があります。

● まとめ。

本作は、007作品なんだけど、友人への復讐のためにひとりで組織に立ち向かうアクション作品として独立して楽しめる作品になってます。ただ、より楽しむには、スタンダートな007ものを知っていたほうがいいと思うので、やはりダルトン007の一作目「リビングディライツ」と併せて観て欲しいですね。

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映画レビュー「ムカデ人間」(封切作品)

Mn

Filem Review
「ムカデ人間」(封切作品・ディノスシネマズ 札幌劇場)


● スタンダートな構成に好感が持てる。

    監督よりホラーを愛する気持ちを感じた。

本日7月23日(土)より札幌では封切り作品。ひさびさに上映をワクワク楽しみにしていた作品。このワクワク感をうまく説明できるだろうか。なんというか、どう解釈してもアカデミー賞捕りそうな作品でもないし、かといって人生が嫌になるほど凄まじくマニアックな作品でもない。ちょうどいい感じなのだ。そこが素敵。

ごはんでいえば、ちょうどいい料理。ほど良いデザート。明日、また食べてもいいよ、という感じかな。凄いごちそうって、明日また食べようって感じではないでしょう。そんな感じ。わかってもらえると嬉しい。

ストーリーはシンプル。ドイツの森で隠遁生活をしている医者。静かで品の良い住まい。でも、地下にはしっかり研究室があり手術もできる。医者の夢は生物を3つつなげた生物を作ること。最初は飼い犬3匹で実験してみたけど、どうやら失敗。自宅の庭にお墓をたてました。次は人間でやりたいもんだと、もんもんとしているとついにチャンスが訪れる、というお話。気になるつなげ方は上の写真を参考。簡単な感じで、いろいろ心配になります。

捕われる男1人ひとりと女性2人。ムカデ人間が完成して「私は新たな生物の創造主だ!」なんて、ひとり正装して祝杯をあげてご満悦。でも、博士それは創造とは違うような…と心の中でひとツッコミ。そんな中、ムカデにされた人間は必死の抵抗や脱出を試みる訳です…

俳優はマッドサイエンティスト役の医者は、かなりいい感で、その動きもひとつひとつはみどころ。見逃さないでいただきたい。でも、その他のキャストはそれほど魅力を感じなかった。男役が日本人の俳優でヤクザという設定から終始怒鳴っているのだけど、あまりそこに面白みがなかった。でも、ではどういったキャスティングがいいのか?と考えてみると、案外この配役のおかげで、他の部分のコワさが引き立っていたかもしれないね。男の最後のセリフはなかなか作品をオシャレなものにしている。

ホラー映画だからSAWみたいな感じを期待した人には肩すかしな作品かも。それほど残酷シーンや、意外な展開もない。撮影も凄く普通な撮り方でアートな感じはないし、構成も凄くスタンダート。

でも、そのスタンダードな展開が素敵なんだよね。道に迷った女性2人が雨の中、医者の家にたどりつくとか、刑事の行動パターンとか。起承転結という感じでうまくまとめてある。もっと、おもしろくできたのではないか、とも思う。でも、やりすぎず控えめにフェードアウトする部分が好感がもてる。「ごちそう」になりすぎないところが僕はとっても好き。これなら、明日また観たくなる。

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